マンション管理研究所 ウォームハート

あなたのマンションの管理業務はその費用に見合った内容で適正に実施されていますか? 当ブログはマンション管理のセカンド・オピニオン”マンション管理士”の活用を推進するブログです。福岡市西区在住マンション管理士が”Warm Heart”なマンション管理をご提案します。

管理会社の滞納督促、どこまでやるの?―マンション標準管理委託契約書(5)第10条~第11条

f:id:deepseacruise:20170815120440j:plain

今回は、マンション標準管理委託契約書の「第10条 滞納者に対する督促」、「第11条 有害行為の中止要求」になります。

管理委託契約書を読むときに、ひとつ注意して欲しいことがあって、それは、しっかり主語を押さえて読むということです。管理委託契約書は必ずしも、管理会社の義務ばかりが書かれているわけではなく、管理組合の義務も書かれています。誰の義務なのか、誰の権利なのかなど、主語が誰なのかを押さえて読んで頂ければと思います。

※ 甲は管理組合、乙は管理会社になります。

☆第10条 管理費等滞納者に対する督促

1 乙は、第三条第一号の業務のうち、出納業務を行う場合において、甲の組合員に対し別表第一1(2)②の督促(※)を行っても、なお当該組合員が支払わないときは、その責めを免れるものとし、その後の収納の請求は甲が行うものとする。

2 前項の場合において、甲が乙の協力を必要とするときは、甲及び乙は、その協力方法について協議するものとする。

  第 10 条関係コメント

 弁護士法第 72 条の規定を踏まえ、債権回収はあくまで管理組合が行うものであることに留意し、第2項のマンション管理業者の協力について、事前に協議が整ってい る場合は、協力内容(甲の名義による配達証明内容証明郵便による督促等)、費用 の負担等に関し、具体的に規定するものとする。

  ※別表第一1(2)②の督促

 管理費等滞納者に対する督促

  1.   毎月、甲の組合員の管理費等の滞納状況を、 甲に報告する。
  2.   甲の組合員が管理費等を滞納したときは、最初の支払期限から起算して○月の間、電話若し くは自宅訪問又は督促状の方法により、その支払の督促を行う。
  3.   1の方法により督促しても甲の組合員がなお滞納管理費等を支払わないときは、乙はその 業務を終了する。

 

第10条は管理費・修繕積立金・駐車場使用料や水道料金等の立替金(以下「管理費等」)の滞納者に対する督促についての規定です。

管理費等の滞納者に対する督促は、最後(滞納金が回収されるまで)まで管理会社の仕事と思われている管理組合の方も多いと思いますが、第10条1項によると、管理会社は一定期間の督促を行った後は、もう督促をしなくていいことになっています。その後の督促と滞納金の回収は管理組合が行わなければならないということになるのです。

ここで「督促」とは何かということですが・・・、管理費等が滞納となった場合に、電話・手紙・訪問等で、「あなたの管理費の支払いは未納になっています。払ってくださいね。」とお願いすることまでです。極端に言えば、ただ未納になっている事実を滞納者に通知するだけでも、契約上の義務を果たしていることになります。最終的な滞納金の回収は義務にはなっていないのです。

管理組合としては、非常に面倒な滞納者への対応が、期間限定の督促までで、回収までは義務になっておらず、もの足りないと思われるかもしませんが、これには弁護士法という法律が関係しています。

弁護士法72条に以下のことが規定されています。

  弁護士法第72条 非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止 

 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

 

難しく書かれていますが、要は、マンションの滞納管理費の回収業務というのは、管理費の滞納という法律事件を扱う行為なので、マンション管理組合から依頼を受けて(委託料を受けて)回収業務を行うことは、「法律事件に関して法律事務を取り扱う」ことになるので、弁護士でない者(ここではマンション管理会社)は行ってはならないということになります。

結局、滞納された管理費等を最終的に回収するためには、管理費の債権者である当事者(管理組合)自らが行うか、弁護士に依頼するしかないということになるのです。

 

☆第11条 有害行為の中止要求

1 乙は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有 部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対し、甲に代わって、次の各号に掲げる行為の中止を求めることができる。

一 法令、管理規約又は使用細則に違反する行為

二 建物の保存に有害な行為

三 所轄官庁の指示事項等に違反する行為又は所轄官庁の改善命令を受けるとみられる違法若しくは著しく不当な行為

四 管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為

五 組合員の共同の利益に反する行為

六 前各号に掲げるもののほか、共同生活秩序を乱す行為

2 乙が、前項の規定により中止を求めても、なお甲の組合員等がその行為を中止しな いときは、乙はその責めを免れるものとし、その後の中止等の要求は甲が行うものとする。

 

この条項に関しては、管理組合側からは「有害行為があれば、管理会社はその行為をやめさせる義務があるんだ。」との主張があり、管理会社側からは「あくまで受託している管理業務を行うときに、差し支えがある場合には中止を求める権利があるというだけで義務ではない。」という主張があって、双方の解釈の違いにより現場が混乱しているケースがあるようです。

個人的には、第1項は管理会社に有害行為に対して注意する権利(権限)を与えていて、中止要求をするかどうかは管理会社の任意であるかのように感じますが、第2項をみると、管理会社に有害行為に対する注意義務があるようにも受け取れます。・・・このようなどちらにも取れるような規定が現場を混乱させているのでしょう。

ただ管理組合側には「同じ住民同士が注意しあうのは気まずい」とか「人間関係が悪くなる」などという、言葉は悪いですが、事なかれ主義的な面や、管理会社に責任転嫁するような面も正直なところあるかと思います。心情は分からないではありませんが「管理の主体は管理組合」であるという原則を思い出していただき、まずは「管理組合として問題を解決する」という意思をもち、その手助けに管理会社に協力を依頼するとういう考え方で臨んでもらいたいと思います。

※ちなみに(一般社団法人マンション管理業協会*の業務マニュアルでは、組合員等の有害行為の中止要求に際しては「理事長と協議の上、理事長の意向に基づき対応する」旨が記載されています。緊急対応を除いては、原則は「理事長(または理事会)で協議した決議事項にしたがって、対応を進めるべき」だと考えているようです。

*マンション管理業協会・・・マンション管理会社の多くが加盟する団体。管理業務主任者の試験や指定講習の実施も行っています。