マンション管理研究所 ウォームハート

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管理組合における合意形成のポイント

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マンション管理組合を円滑に運営するためには、区分所有者のコンセンサスを得ること、いわゆる合意形成が重要です。

マンションの法律である「区分所有法」は区分所有者全員に議決権を持たせている(直接民主制)ので、ある議題については、区分所有者及び議決権の過半数、ある議題については区分所有者及び議決権の3/4以上などの要件を定めて、多数決の原則で管理組合を運営することを定めています。

しかし、マンション内部で、ある議題について賛成派と反対派に別れて仲たがいすることは、同じ建物で生活する者同士として好ましくありません。だから、なるべくじっくり話し合ってお互いの立場を理解しあって物事を決めていく過程、つまり合意形成の過程が重要になるわけです。これはほんとに手間がかかり大変なことですが、マンションという一棟の建物の中で生活している以上やむを得ません。

そこで今回は、その合意形成をうまく行うための手法についてまとめてみました。

1.合意形成のための議決要件

(1)総会

管理組合には、総会という話し合いの場がありますが、合意の要件は区分所有法によれば以下のように規定されています。

区分所有法39条

  1. 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
  2. 前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。(※3項省略)

 

集会とは総会のことですが、総会の議事(議決)は、原則として「区分所有者及び議決権の各過半数」です。これが「普通決議」と呼ばれるものです。普通決議は2項により、規約で別段の定めができるので、標準管理規約では、総会は議決権総数の半数以上を有する組合員の出席を条件(47条1項)とし、その議決は「出席組合員の過半数」としています。区分所有法と比べると、頭数要件がなくなっています。

また区分所有法39条2項では、「特別の定数が定められている事項」とありますが、これが「特別決議」で、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数で議決します。共用部分の変更(区分所有法17条1項)や規約の設定・変更・廃止(区分所有法31条1項)などが該当します。

その他に、「特殊決議」と呼ばれるものもあり、建物の取り壊し及び建替えについて、区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数(区分所有法62条1項)で決議されます。

さて、ここまでは共用部分の管理に関する事項についての議決要件ですが、共用部分を売却したり、共用部分である管理室を改造して専有部分にするなど共有物の性質を一変させる行為については、区分所有法には規定がありません。管理を超える行為(=共有部分の処分)として、民法の共有物の変更(民法251条)の原則に返り、共有者全員の同意が必要になります。

民法第251条

 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

 

 ☆各種議決要件

  議決要件 具体例

普通

決議

区分所有者及び議決権の各過半数(区分39条1項)

共用部分の管理に関する事項(区分18条2項)、管理者の選任及び解任(区分25条1項)等

特別

決議

区分所有者及び議決権の各3/4以上(区分39条2項)

共用部分の変更(区分17条1項)、規約の設定・変更・廃止(区分31条1項)等

特殊

決議

区分所有者及び議決権の各4/5以上(区分62条)

建物の取り壊し及び建替え(区分62条1項)等
共有物の処分

共有者全員合意(民法251条)

共用部分の売却、管理室を専有部分に改造する等

                               ※ 区分・・・区分所有法

(2)理事会

管理組合には総会の他に理事会という合意形成の場があります。この理事会については区分所有法には規定がなく、管理に関する事項として規約に定めることができます(区分所有法30条)。

そこで標準管理規約53条は、理事会は、理事の半数以上の出席を条件に開催でき、議決は出席理事の過半数で決めるとされています。

(3)その他の合意形成の場

そのほかの合意形成の場として、「専門委員会(専門性や継続性が求められる議題を検討する会)」がありますが、専門委員会として議決する方法は運営細則などにより、あらかじめ決めておくことが望ましいでしょう。出席理事の過半数でもいいし、委員全員の合意でも構いません。

また、必ずしも議決を必要としない「住民集会」や「住民説明会」も合意形成を醸成する場として重要なものです。積極的に開催して頂きたいと思います。

 2.合意形成のポイント

合意形成の場における注意事項には以下のものがあります。

(1)総会の場合

① 議案化に向けた体制の整備、問題点の把握を行いましょう。

総会へ議案を提出するのは理事会の業務です。議案化するには専門委員会での検討、外部専門家からの助言、住民アンケートの実施による住民意識の把握等が必要になります。決して一部の区分所有者の意見のみや、理事会の独善的な提案にならないよう、共有者全員のため(共同の利益)になるような提案にして下さい。

② 必要に応じて事前説明会を開催しましょう。

重要な議案、複雑な議案については総会前に説明会を開くことが有効です。例えば管理規約の全面的な改正などは、事前説明会で詳細な説明と質疑応答をすることにより、総会の議決をスムーズに行うことができます。

③ 総会出席率を上げましょう。

総会の議決要件は、区分所有者及び議決権の各過半数(区分所有法39条)なので、総会の出席者(委任状及び議決権行使書の提出者を含む。)は最低でも区分所有者の過半数が必要です。

通常、総会通知(総会案内)には出欠表をつけて、管理組合へ返送(提出)するようになっていると思いますが、総会通知を早めに出したり、提出期限までに提出がない区分所有者には督促するなどが必要です。また、公式な通知の他にも、マンションの広報誌や掲示板などでお知らせしたり、あらかじめ通常総会の日時を固定化しておくのも有効です。あまりにも出席率が悪い管理組合の場合は、一時的に総会出席者に特典をつけるなどの工夫もやむを得ないのではと思います。

(2)理事会の場合

① 理事は理事会へ出席しましょう。

理事は、理事会に出席して話し合うことが重要です。 

標準管理規約第53条関係コメントには以下のような記載があります。

① 理事は、総会で選任され、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとされている。このため、理事会には本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められる。

これは、理事会には理事本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められるということです。基本的には委任状を提出したり、代理出席が認められるものではありません。

② 外部専門家を活用しましょう。

 標準管理規約34条には「専門的知識を有する者の活用」に関する規定があります。

 第34条 管理組合は、マンション管理士(適正化法第2条第五号の「マンション管理士」をいう。)その他マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者に対し、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、相談したり、助言、指導その他の援助を求めたりすることができる。

 

また、標準管理規約33条・34条関係コメントには、以下の記載もあります。

① マンションは一つの建物を多くの人が区分して所有するという形態ゆえ、利用形態の混在による権利・利用関係の複雑さ建物構造上の技術的判断の難しさなどを踏まえ、建物を維持していく上で区分所有者間の合意形成を進めることが必要である。

このような中で、マンションを適切に維持、管理していくためには、法律や建築技術等の専門的知識が必要となることから、管理組合は、マンション管理業者等第三者に管理事務を委託したり、マンション管理士その他マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者に対し、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、相談したり、助言、指導その他の援助を求めたりするなど、専門的分野にも適切に対応しつつ、マンション管理を適正に進めることが求められる。

管理組合が支援を受けることが有用な専門的知識を有する者としては、マンション管理士のほか、マンションの権利・利用関係や建築技術に関する専門家である、弁護士、司法書士建築士行政書士公認会計士、税理士等の国家資格取得者や、区分所有管理士、マンションリフォームマネジャー等の民間資格取得者などが考えられる。

専門的知識を有する者の活用の具体例としては、管理組合は、専門的知識を有する者に、管理規約改正原案の作成管理組合における合意形成の調整に対する援助建物や設備の劣化診断、安全性診断の実施の必要性についての助言、診断項目、内容の整理等を依頼することが考えられる。

③ 議論を尽くした後は多数決であることを認識しましょう。

民主主義のルールにより、最終的には多数決で決めることになりますが、議案にはできる限り反対者の意見を考慮することも必要ですし、そのことは理事会議事録に記載しておくことも必要です。

④ 広報をしっかり行いましょう。

理事会議事録や理事便りの配布・掲示及び理事会議事録の閲覧ができるような仕組みを作っておきましょう。

 

3.まとめ

これまでに述べてきた部分と重なる部分もありますが、合意形成の手段についてまとめます。

① アンケートを実施しましょう。

管理規約の改正や、大規模修繕工事の実施などの重要な議案の場合は、アンケートを実施して、個々の区分所有者の意見を把握し議案に反映させることが重要です。

② 住民集会、説明会を積極的に開催しましょう。

総会だけが合意形成の場ではありません。議案を議決することができない住民集会や説明会などでも、直に区分所有者の意見を集約し、議案づくりに反映させることができます。

③ 広報活動を行いましょう。

議事録、管理組合の広報誌の配布・回覧、掲示板への掲示、ホームページの開設等ITの活用などで総会、理事会で何が行われているかしっかりと広報することが重要です。

また、総会、理事会の議事録は区分所有者や利害関係者からの請求があれば、原則として閲覧させなければならない(標準管理規約49条3項、53条4項)ので、閲覧させるための仕組みをしっかり作る必要があります。

④ コミュニティ活動を行いましょう。

堅苦しい管理組合の会議だけでなく、住民間の懇親を深めるためのイベントを企画・開催し、普段から本音で話せる状況を作っておくことも有効です。自治会などと協力して行うとよいでしょう。     ...END