マンション管理研究所 ウォームハート

あなたのマンションの管理業務はその費用に見合った内容で適正に実施されていますか? 当ブログはマンション管理のセカンド・オピニオン”マンション管理士”の活用を推進するブログです。マンション管理士が”Warm Heart”なマンション管理をご提案します。

大規模修繕工事を行うために必要な合意形成

f:id:deepseacruise:20170824102646j:plain

管理組合の運営のポイントは、一にも二にも「合意形成を図ること」です。
それが、10年以上かけて積み立ててきた金額を一挙に使ってしまう大規模修繕工事となると、合意形成がより重要になることは言うまでもありません。

そこで今回は、大規模修繕工事を行うために必要な合意形成についてまとめてみました。

1.総会における合意形成

総① 大規模修繕工事の実施の承認

大規模修繕工事に関して、総会で合意形成を図る必要がある事項には何があるでしょうか?

標準管理規約には、大規模修繕工事に関して総会決議が必要な事項を定めています。

 標準管理規約48条(議決事項)

次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。

一 収支決算及び事業報告

二 収支予算及び事業計画

三 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法

四 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止

五 長期修繕計画の作成又は変更

六 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し

七 第28条第2項に定める建物の建替えに係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し

八 修繕積立金の保管及び運用方法

九 第21条第2項に定める管理の実施

十 区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任

十一 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧

十二 区分所有法第62条第1項の場合の建替え

十三 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法

十四 組合管理部分に関する管理委託契約の締結

十五 その他管理組合の業務に関する重要事項

大規模修繕工事とは、「第28条第1項に定める特別の管理」に規定する「一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕(計画修繕)」のことをいいます。よって大規模修繕工事の実施には総会決議が必要となります。

標準管理規約の中で、大規模修繕工事に関する議決事項はココ(48条6号)にしかありません。

では、それ以外のことは大規模修繕工事に関して総会決議は必要ないのかといえば、そうではなく、その他の議決事項は、「管理組合の業務に関する重要事項(標準管理規約48条15号)」として決議することになります。

大規模修繕工事に関する重要事項は、工事内容によっても、それぞれの管理組合によっても違うと思いますので、以降は私が最低限必要だと考える総会決議ついて述べていきます。

総② 工事方式の承認

大規模修繕工事の方式には、主に「責任施工方式」と「設計監理方式」がありますが、それぞれの方式のメリット、デメリットの他、理事会がそのように提案する理由を示して合意を得る必要があります。

総③ 施工業者、設計監理者の選定方法の承認

業者の選び方は、最も説明責任が必要な部分です。あらかじめ選定方法についての合意を得ておけば、その後の業者決定もスムーズにいきます。

施工会社の選定方法には、

  • 随意匿名方式(1社のみに見積りを依頼する方法)
  • 入札方式(数社から見積りを取り、最低価格を提示した施工業者に決定する方法)
  • 見積り合わせ方式(数社から見積りを取り、ヒアリングを行い総合的に判断して決定する方法

があります。

設計監理者の選定方法はかつては、随意匿名方式で特定の設計監理者を選ぶことが多かったのですが、最近は見積り合わせ方式も増えてきました。

総④ 設計監理者の承認

設計監理方式の場合には、設計監理者の選任決議を取る必要があります。

総⑤ 修繕基本計画の承認

修繕範囲、修繕方法、修繕仕様等の工事の基本的な計画について、組合員の合意を得ます。

総⑥ 施工業者の承認

施工業者とともに、工事金額も承認されることになります。

2.総会以外の合意形成

合意形成は総会だけで完結するものではありません。次は総会以外で必要な説明会等についてみていきます。

説① 設計監理者のプレゼンテーション

総会で、複数の設計監理者の中から組合員の投票で選ぶ場合(総会直接決定方式)は、事前に設計監理者のプレゼンテーションを実施します。

総会の中でプレゼンテーションを実施してもいいですが、プレゼンテーションには通常各30分程度の時間がかかりますし、また、別日に総会を開催したほうが考える時間も取れるので、できればプレゼンテーションと総会は別々の日に設定したほうがいいと思います。

※ 理事会で設計監理者を内定し総会に提案する場合(理事会内定総会提案方式)は、プレゼンテーションを理事役員や修繕委員以外の組合員に公開する必要はありません。ただし、総会では、理事会がその設計監理者を内定し提案する理由を、他の組合員に納得できるよう説明し承認を得なければなりません。(100戸以上の大規模な管理組合では、理事会内定総会提案方式が多くなるでしょう。)

説② 建物調査・診断結果報告会

修繕設計を行うために建物調査・診断を行いますが、その結果報告を全組合員を対象に行うことにより、修繕範囲、修繕方法、修繕仕様等について事前の知識を得ることができ、その後の修繕基本計画のスムーズな承認につながります。

説③ 施工業者のプレゼンテーション

(※2-①の設計監理者選定と同じ内容となります。)

総会で、複数の施工業者の中から組合員の投票で選ぶ場合(総会直接決定方式)は、事前に施工業者のプレゼンテーションを実施します。

総会の中でプレゼンテーションを実施してもいいですが、プレゼンテーションには通常各30分程度の時間がかかりますし、また、別日に総会を開催したほうが考える時間も取れるので、できればプレゼンテーションと総会は別々の日に設定したほうがいいと思います。

※ 理事会で施工業者を内定し総会に提案する場合(理事会内定総会提案方式)は、プレゼンテーションを理事役員や修繕委員以外の組合員に公開する必要はありません。ただし、総会では、理事会がその施工業者を内定し提案する理由を、他の組合員に納得できるよう説明し承認を得なければなりません。(100戸以上の大規模な管理組合では、理事会内定総会提案方式が多くなるでしょう。)

説④ 工事説明会

工事中の生活上の注意事項の説明や代替駐車場の案内を行います。この説明会は組合員(区分所有者)だけでなく、賃借人を含めたマンションの全居住者が対象になります。

3.総会、説明会等のスケジュール案

   決議事項 又は 説明事項
#1 総 会

総① 大規模修繕工事の実施の承認 
総② 工事方式(責任施工方式or設計監理方式orその他の方式)の承認 
総③ 設計監理者の選定方法 、その他修繕委員会の設置等

#1 説明会 説① 設計監理者(候補)のプレゼンテーションの実施
#2 総 会 総④ 設計監理者の決定
#2 説明会 説② 建物調査・診断結果の報告
#3 総 会 総⑤ 修繕基本計画の承認 総③施工業者選定方法の決定
#3 説明会 説③ 施工業者(候補)のプレゼンテーション
#4 総 会 総⑥ 施工業者の決定
#4 説明会 説④ 工事説明会(工事中の生活上の注意事項や代替駐車場の説明)

こんなに多くの総会や説明会が必要なのか、と思われる方も多いと思いますが、私の経験からすると、このくらいの過程を経ても問題が起こるときは起きるという感覚です。

もちろんこれは私案ですので、もっとコンパクトに大規模修繕工事の合意形成を行うこともできるでしょう。いずれにせよ、情報の開示、運営の透明化など開かれた管理組合運営を心掛けて頂ければと思います。

4.大規模修繕工事の決議要件

(1)区分所有法の改正

平成14年の区分所有法の改正により、共用部分の変更は、その形状または効用の著しい変更を伴うものに限り、特別決議*1で決するとされました。(区分所有法17条1項)

改正前は、共用部分の変更について、著しく多額の費用を要する行為(例えば、外壁や屋上防水等の大規模修繕工事)を実施するには特別決議を必要としていましたが、改正によって、形状または効用の著しい変更を伴わない計画的な大規模修繕工事については、規模の大小、費用の多寡を問わず普通決議*2で決することができるようになりました。

☆ 形状または効用の著しい変更を伴うもの(重大変更)   ⇒ 特別決議

☆ 形状または効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更) ⇒ 普通決議

*1 特別決議・・・区分所有者及び議決権の各3/4以上

*2 普通決議・・・区分所有者及び議決権の過半数

(2)形状または効用の変更

共用部分の「形状または効用の著しい変更」に当たるのはどのような場合になるでしょうか? 

 「形状の変更」とは、その外観、構造を変更することをいいます。例えば、階段室を改造してエレベーターを設置する工事などが考えられます。

「効用の変更」とは、その機能や用途を変更することをいいます。例えば、集会室を廃止して賃貸店舗に転用する場合などなどが考えられます。

したがって、外壁の塗り替えや屋上防水を補修することを主な工事内容とする大規模修繕工事は、「共用部分の形状または効用の著しい変更」ではないため、集会の普通決議で行うことができることになります。

ただし、大規模修繕工事の内容に「共用部分の形状または効用の著しい変更」を伴う変更が含まれている場合は、その部分については別途、特別決議が必要になります。...END