マンション管理研究所 ウォームハート

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大規模修繕工事を行う前に、建物の調査診断のススメ

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理事会や修繕委員会が大規模修繕工事を総会に提案する場合、「なぜ今、この時期に大規模修繕工事を行わなければならないのか?」ということを、他の組合員(区分所有者)に説明しなければなりません。

  • 管理会社から「そろそろ時期なんですよ!」と言われたから
  • 長期修繕計画に来年やると計画されているから

もし、そんな理由だけで総会承認を取ったとするならば、いずれ、管理組合内部で異論が噴出したり、工事の不具合が発生することになる可能性が高くなります。

大規模修繕工事を行う理由は、管理会社から言われたからではなく、単に長期修繕計画に定められているからでもなく、実際に建物・設備がどの程度劣化しているのかを調査し、いつ修繕するのが適切なのかを診断した結果で行わなければなりません。

調査診断をせずに大規模修繕工事を行うことは、医者が患者にどこが痛みの原因かを調べずに、いきなり手術するようなものなのです。

今回は、そんな大規模修繕工事を行う判断材料となる「建物の調査・診断」についてまとめてみました。

1.調査・診断とは

建物の調査・診断とは、建物各部の現状の劣化・損傷の程度、不具合点・問題点などを正確に調査(把握)し、各部の耐久性・耐用性を明らかにすることです。

一定の手法を用いて調査・測定し、その結果を評価して、将来の影響を予測するとともに、必要な対応を提案してもらいます。

調査・診断は以下の3つの動機により、建築士事務所・管理会社・施工会社などの専門家に依頼して行うのが一般的です。

  動機   調査診断の目的   調査診断の対象  調査診断のレベル
①日常の点検で不具合が見つかった場合 不具合の原因を特定するため。修繕工事の要否を判断するため。 不具合が見つかった部分周辺。 詳細な診断
②長期修繕計画を作成又は見直す場合 現状を把握するため。 将来の予測をするため。 すべての修繕項目。  アンケート調査で指摘された部分。 簡易な診断(劣化状態により詳細な診断を行う。)
大規模修繕工事を行う場合 劣化状態を把握するため。修繕工事の要否を判断するため。 修繕工事の対象部分が中心。アンケート調査で指摘された部分。 劣化状態に応じた診断(簡易診断及び詳細な診断)

以下、③大規模修繕工事を行う場合の調査・診断についてまとめます。

2.調査・診断の依頼のしかた

(1)専門家への依頼の準備

調査・診断には次の資料が必要となりますので、準備しておきましょう。

※資料の有無で、要する時間や費用が異なることがあります。

  • 分譲時のパンフレット
  • 建築時の設計図書、建築確認済証などの手続き書類
  • 法定点検などの点検報告書、過去の調査・診断報告書等

依頼にあたっては、調査・診断の目的や要望等を明確に示す必要があるので、次の事項について整理しておきましょう。

  • 調査・診断に至った経緯、不具合等の状況
  • 調査・診断のねらい、診てもらいたい部位や内容
  • 欲しい調査結果(現状のままで問題があるのかいつ頃どのような方法で修繕したらいいのか修繕費用はおおよそどのくらいになるのか等)

(2)専門家の選定

大規模修繕工事を実施する場合、一般的に設計・工事監理と併せて建築士事務所等に依頼します。または、設計・施工と併せて施工会社、管理会社等に依頼します。

調査・診断は専門的なので、調査や評価の方法などは依頼した専門家に委ねるしかありません。経験が豊富で信頼でき、意思疎通ができる専門家を選びたいものです。

☆専門家の選定については次の記事も参考になります。

condominium-management.hatenablog.com

(3)専門家との契約の締結

専門家と調査・診断の業務委託契約を締結します。

契約書とその約款、費用の内訳書(見積書)、貸与する資料とそのリストなどについて、専門家から説明を受けて一つ一つ確認しましょう。

組合員に対する報告会への出席やその資料作成などは、仕様書で業務の範囲を明確にしておくことがトラブルを避けるためにも大切です。

調査・診断の費用は、その目的、マンションの規模、仕様、経年、劣化状況などによって異なります。契約の際には、専門家から費用の内訳について十分に説明してもらいましょう。

3.調査・診断の手順

大規模修繕工事の場合は、「予備調査・診断/アンケート調査」  →  「本調査・診断」の順で行われます。あらかじめ、組合員の方々に作業の予定をお知らせして調査・診断の協力をお願いすることになります。

(1)予備調査・診断の実施

管理組合から依頼を受けた専門家は、竣工時の設計図書等の情報や、その後の修繕履歴(過去の修繕履歴、点検や調査・診断の報告書の記録など)を調査したうえで、対象建物の状況を主に目視で確認します。

(2)アンケート調査の実施

必要に応じて、共用部分(バルコニー等)に起因する不具合を探り出すための全戸アンケート調査を実施します。

(3)本調査・診断の実施

本調査に当たっては、的確な結論を得るため詳細で、かつ広範な調査が望まれますが、一般的には、経済性を考慮して、調査目的に応じた簡易な調査(簡易診断)から始め、判断がつかないような場合は、さらに詳細な調査(詳細診断)へステップを踏んで進められます。

(4)調査・診断報告書の作成

本調査・診断の結果は、その目的に応じて、各部位の劣化の状態と今後の耐用性を明らかにし、修繕工事の要否の判断の根拠資料とするため、「調査・診断報告書」としてまとめられます。

4.調査・診断報告書の受領・説明

調査・診断の結果は、大規模修繕工事の要否や内容を判断する根拠となります。重要な報告なので、十分に理解するまで専門家から説明を受けてください。

報告は、まずは修繕委員会や理事会で説明を受け、対応の方針案を検討した後、組合員の方々を対象にした専門家による説明会を開催し、その内容を周知して、総会で方針を決定するプロセスが欠かせません。

5.調査・診断報告書の保管

「調査・診断報告書」は、今後の大規模修繕工事や長期修繕計画の見直しを行う際など、将来の維持管理にとても大切な情報になります。

報告を受けた後は、ファイリングして管理室等に保管し、確実に引き継がれるように整理・保管の方法を決めておきましょう。

 ※1~5 については、公益財団法人マンション管理センターの「マンション管理組合による自主点検マニュアル」から抜粋して紹介しました。

6.まとめ

建物調査・診断は大規模修繕工事を行う動機・理由のために必須なことがお分かり頂けたと思います。

ちなみに調査・診断を依頼した専門家の対応が良ければ、そのまま大規模修繕工事の設計監理を任せることもあり得るので、専門家の選定に際しては、大規模修繕工事の設計監理費の見積もりを参考として頂いておくのもアリだと思いますよ。

専門家としても、調査・診断の後に設計監理の仕事があるかもしれないと思えば、調査の精度も変わってくるかもしれませんしね。

また、5の「調査・診断報告書の保管」に追加してですが、「調査・診断報告書の原本を閲覧できること」を周知しておくことをお勧めします。

組合員向けの報告会は行うのですが、そこでの説明資料は調査・診断報告書の要約版になると思います。(原本は報告の数量が多すぎるため)

よって、詳細を確認したい組合員や、報告会に参加できなかった組合員のために原本の閲覧を可能にしておくのです。なかには、「報告会に参加してないから、工事のことなんか知らない、聞いてない・・・」などと言うツワモノが現れるかもしれませんので・・・ ...END