ヒラメキ! マンション管理

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管理組合における書類の保管義務や閲覧請求とその関連の判例

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管理組合には様々な書類が存在します。マンションが建てられたときの竣工図書、管理規約、総会議事録、収支決算書類、修繕履歴等です。

今回は、各種書類の保管義務や閲覧請求についてまとめてみました。

1.区分所有法上の保管義務・閲覧請求

区分所有法上の保管・閲覧義務がある書類としては、

  1. 管理規約
  2. 集会の議事録(総会議事録)
  3. 全員合意による書面決議

の3つになります。

この書類は管理者(通常は管理組合の理事長)が保管し、利害関係人の請求があれば、正当な事由がある場合を除いて、閲覧させなければなりません。なお、マンション内の見やすい場所に、3つの書類の保管場所を掲示しなければなりません。

◉閲覧請求ができる利害関係人とは・・・

区分所有者、専有部分の賃借人、管理組合の債権者、専有部分の抵当権者等の現に直接利害関係を持つ者及び、これからそのような地位を取得しようとする者も利害関係人に含まれます。

◉なぜ、利害関係人に閲覧させなけらばならないのか?

区分所有者はもちろん、賃借人やその部屋を購入しようとする人などの利害関係人にとっても、管理規約や総会での決まり事は広く影響を及ぼすからです。

◉閲覧を拒否できる正当な事由とは・・・

理事長は、利害関係人からの閲覧請求を受けた場合は、原則として閲覧を拒むことはできません。ただし、正当な事由がある場合は閲覧拒否できますが、その正当な事由とは、深夜に請求する場合や、嫌がらせを目的として繰り返し請求するなど、その請求が閲覧請求権の濫用と認められる場合です。

なお、不当に閲覧を拒否した場合は20万円以下の過料に処せられます。

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2.マンション標準管理規約上の保管義務・閲覧請求

標準管理規約上の保管・閲覧対象書類は、区分所有法よりも増えます。

  1. 総会議事録、理事会議事録
  2. 帳票類(会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿その他)
  3. 長期修繕計画、設計図書、修繕等の履歴等
  4. 規約原本、規約の変更を決議した総会議事録、使用細則等

になります。これらの書類についても、利害関係人の請求があれば閲覧させなければなりませんが、区分所有法と違って、書面によって閲覧請求(一部は閲覧理由が必要)をすることになっています。

※2と3については、管理規約に規定がなければ閲覧請求の対象になりません。管理組合運営の透明性や公開性等のために、閲覧請求が認められるべきものと考えます。

◉閲覧請求に理由が必要となる書類

2の帳票類、3の長期修繕計画等を閲覧請求するには理由が必要です。これは、1の総会議事録や4の管理組合に比べて、内部書類という性格が強く、また法律(区分所有法)上、閲覧が認められているものではないからです。

◉閲覧を拒否できるか?

区分所有法上は、正当な事由があれば閲覧を拒否できますが、標準管理規約には閲覧拒否できる場合を規定していません。原則、閲覧拒否できないということになりますが、やはり正当事由(深夜に請求、嫌がらせ目的での繰り返し請求等、閲覧請求の濫用となる場合)がある場合に限って、閲覧拒否できると考えられます。

◉「閲覧を拒否できる」という規約の定めは有効か?

利害関係人からの請求があった場合に、正当な理由がなくても議事録等の書類の閲覧を拒むことができるなどの規約を定めることはできません。仮にそのような規約を定めても、区分所有法に違反し無効になります。

◉理事長による閲覧の日時・場所等の指定

標準管理規約は、理事長に閲覧の日時や場所等を指定することを許しています。いきなり「議事録を見せろー」と言われても、直ちに閲覧させなくてもよいわけです。

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3.閲覧請求に関する判例

◉専有部分を譲渡して区分所有者でなくなった者は利害関係人か?

(東京高裁判決:平成14年8月28日)

会計帳簿等の閲覧・謄写請求について、専有部分の共有持分を譲渡して区分所有者でなくなった者は利害関係人に該当せず、閲覧・謄写請求は認められないとした。

◉区分所有者名簿の記載事項の一切の開示請求を認められるか?

東京地裁判決:平成20年9月24日)

区分所有者が、管理会社に対して、区分所有者全員の直近の住所・氏名・電話番号等、その特定並びに連絡に必要な一切の事項を開示することを請求したが、請求の根拠が明らかでなく、区分所有者だからといって、開示を直接請求できる権利が当然に導かれるものではないとした。

◉組合員は、会計帳簿等の包括的閲覧請求権を有するか?また、組合員名簿の閲覧請求ができるか?

東京地裁判決:平成21年3月23日)

会計に関するすべての帳簿の閲覧を請求したとしても、包括的に会計帳簿等全部とするようなことは許されず、閲覧の理由に相応の理由があり、かつ、閲覧を求める書類に、閲覧を求める理由との関連性が認められる書類に限って認められる。また、組合員名簿については、住所・電話番号を含む閲覧を認めるには、本人の同意が必要と考えるべきものとした。

◉会計帳簿等の書類について、管理組合規約に閲覧を認める規定があるだけで、謄写を認める規定がない場合に謄写請求は認められるか?

〈ケース1〉

東京地裁判決:平成21年3月23日)

閲覧対象書類が多数の事項、金額等を記載した会計帳簿等である以上、閲覧者においては、金額の対象や計算その他の分析が必要になると解されるが、これを閲覧のみで正確に行うには長時間を要するおそれがあり(途中略)、謄写機械が発達している現在においては、条理上、謄写も許されると解するのが相当であるとした。

〈ケース2〉

東京地裁判決:平成23年3月3日)

閲覧請求権は、区分所有者が管理組合・役員に対して有する監督是正権の前提であり、会計帳簿等を検討する場合には、数字の検討、対比を必要とするため、閲覧のみでは十分に目的を達成できない場面が容易に想定されることから、閲覧請求権の対象となる文書については、閲覧に加えて謄写も求めることができるとした。

控訴

(東京高裁判決:平成23年9月15日)

謄写をする際には、謄写作業を要し、謄写に伴う費用負担が生じるといった点で閲覧とは異なるのであるから、閲覧が許される場合に当然に謄写も許されるということはできない。謄写請求権が認められるか否かは、当該規約が謄写請求権を認めているか否かによるものであり、当該規約に謄写請求権を認める規定がない以上、謄写請求権は認められないとした。

判例は、「会計帳簿等の謄写請求」については判断が分かれています。しかし、管理規約又は総会議事録、理事会議事録については、管理規約に謄写請求を認める規定がないといって拒否できるものではないと私は考えています。これらの書類は広くその内容が区分所有者に周知されなければならないものであり、通常、総会議事録は全戸にコピー配布されているものであり、理事会議事録も管理組合によっては全戸配布されているものです。よって謄写請求は当然に認められるものと思います。(ただし、管理規約については、ページ数が多いので、コピー費用を請求者負担にすることを細則に定めるなどの工夫が必要だと思います。)

4.まとめ

標準管理規約は平成28年の改正で、保管・閲覧対象書類を増やしました。管理組合の情報開示はますます重要になってきてるので、まだ規約改正が行われていない管理組合は検討してみてはいかがでしょうか。