マンション管理研究所 ウォームハート

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その議案、総会決議だけで大丈夫ですか?

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 マンションに関する法律で、基本法として位置付けされるのが「建物の区分所有等に関する法律」、略して「区分所有法」といわれる法律です。

 成立したのが今から50年以上昔の昭和37年。そこから2度の大きな改正(昭和58年、平成14年)を経て現在に至るわけです。

 不肖、わたくしもマンションの管理に携わって10年、何度も区分所有法を読むのですが、いまだに分からない・理解不能なことが多く、そういう意味でもこのブログを書くことによって理解を深めようとしているわけです。

 さて今回は、その区分所有法と関係が深い「集会」と「規約」に関することです。

1.管理組合と集会、規約

 まず区分所有法3条を見てください。※前段部分のみ

区分所有法第3条(区分所有者の団体)

区分所有者は、全員で建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成(*1)し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる(*2)

(*1)・・・「区分所有者は、全員で、建物・その敷地・附属施設の管理を行うための団体を構成する。」となっています。団体とは管理組合のことですが、分譲マンションを購入し区分所有者になると、イヤでも管理組合の構成員(組合員)になることを示しています。

(*2)・・・集会の開催・規約の制定・管理者の設置、この3つは任意規定です。

・集会は、管理組合の運営に関する意思決定をする総会(又は臨時総会)をいいますが、管理者は、少なくとも毎年1回集会を招集しなければなりません。(区分所有法34条2項)

・規約は、共用部分の管理や使用をめぐる区分所有者間のさまざまな利害調整を図るための、区分所有者が相互に従うべき規範(ルール)です。

2.管理組合の意思決定手続き

 管理組合という集団がその意思を決定する手続きには、集会と規約があります。

 集会は管理組合の最高意思決定機関ともいわれますが、すべての意思決定を集会で決することができるわけではなく、議案によっては、規約で定めるという方法のみ(絶対的規約事項)することができ、集会決議では決することができない事項があります。

規約の分類  
強行規定たる定め 区分所有法で直接に定め、規約の決定を許さないもの
絶対的規約事項 規約という形式によらなければ、その点に関する定めをすることができない事項(規約という方法でのみ定めることができる事項)
相対的規約事項 規約以外の方法でも区分所有者が自由に定めることができる事項(集会での決議で足りる事項)

  区分所有法31条1項前段は「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によってする。」とあり、規約の定めも集会の決議の一種に他ならないのですが、規約という方法でのみ定めることができる事項(絶対的規約事項)と、集会での決議で足りる事項(相対的規約事項)は、集団意思決定の手続きとしては法律上区分けされているのです。

 したがって、本来は規約で定めなければならないのに、集会決議のみで意思決定した場合、手続に瑕疵があるとして集会決議が無効になることがあります。

 理事会は、集会に提案する議案が区分所有法の強行規定に反してないか、規約の改正が必要な事項に該当しないかを十分に検討しておかなければなりません。

3.集会決議が無効とされた例

(1)未収金回収のための弁護士費用

東京高裁 平成7年6月14日判決

 滞納管理費の取立訴訟を提起するための必要な弁護士費用の負担に関する事項は、共用部分の管理に要する事項(区分所有法18条1項)として集会決議事項に該当するが、 特定の組合員の意に反して一方的に義務なき負担を課し、あるいは他の組合員に比して不公正な負担を課すような決議は、集会が決議できる範囲を超えたものとして無効である。

一方で、

東京地裁 平成17年9月12日判決

 違約金としての弁護士費用の請求の定めは、建物又はその敷地若しくは付属施設の管理に関する区分所有者相互間の事項(区分所有法30条1項)に該当すると解されるから、規約において 管理費を滞納した区分所有者に未払管理費の請求訴訟に係る弁護士費用を負担させる旨を定めることができると解される。

⇒弁護士費用請求の規約の定めがなく、 滞納管理費の請求訴訟の訴えを授権する集会において規約と同様の内容で決議したとしても、裁判所は弁護士費用の請求は認めていません。

※標準管理規約60条2項

 組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。

(2)滞納者の氏名公表

大阪簡裁 平成22年3月24日判決

 管理費等の滞納者の氏名公表基準を作成し、総会で可決承認した上で、滞納者に対して、払わなければ氏名公表をせざるを得ないとの事前告知を行った。その後、支払いも支払計画書の提出もなかったため、 翌年の通常総会議案書で管理費滞納者の氏名と滞納額を公表した。

 これに対し、滞納を公表された組合員が「プライバシーを侵害する違法行為により、身体的、精神的苦痛を受けた。金100万円の損害賠償を支払え」とする訴訟を管理組合を相手に起こした。

 判決は「本件氏名公表行為は、被告(管理組合)の違法な目的の下に行われたものであるとの原告の主張はいずれも採用できず、 その公表に至る経緯、目的、公表内容、公表方法及び公表までに取られた手続き等に照らすと、長期にわたる管理費滞納組合員に対し、その納入を促す正当な管理行為としての範囲を著しく逸脱したものとはいえず、不法行為を構成するものとはいえないと解するのが相当である。」と請求を棄却した。

⇒管理組合は管理費等滞納者の氏名公表に至る経緯、目的、公表内容、公表方法及び公表までに取られた手続き等が、 正当なものであることの立証を求められます。

  やはり重要なことはしっかり規約に定めるということが大事なようです。...END