マンション管理研究所 ウォームハート

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管理組合は個人賠償責任保険を一括付保すべきか?

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 区分所有法18条4項に、「共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。」と規定されています。つまり、損害保険契約は共用部分を管理する団体である管理組合の業務ということです。業務であるからには、そのマンションの規模、地理的環境、居住者のニーズ等に沿った損害保険の掛けなけれなりません。今回は、ここ数年で保険料の値上げが顕著な個人賠償責任保険についてまとめてみました。

1⃣ 個人賠償責任保険とは?

個人またはその家族が、日常生活で誤って他人にケガをさせたり他人の物を壊したりして、損害賠償金や弁護士費用などを負担した場合の損害を補償する保険、

あるいは、個人の「住宅の管理」または「日常生活」に起因して、国内外(注)で発生した「法律上の損害賠償責任」を負担することによって被る損害を補償する保険です。

(注)国内に限定している保険商品もあります。

火災保険や傷害保険、自動車保険などの特約として契約するのが一般的になっています。(以前はこの保険単体での販売もしていましたが現在はなくなっています。)

保険期間1年、保険金額1億円に設定して契約しても、年間保険料は約2,000~4,000円程度であり、契約しやすいところにも特徴があります。

2⃣ 補償の対象となる人の範囲

    ・本人
    ・配偶者
    ・生計を共にする同居の親族
    ・生計を共にする別居の未婚の子

世帯主が契約すれば、子供が起こした事故も補償されます。また、子供には「生計を共にする別居の未婚(これまでに婚姻歴がないこと)の子」が含まれますので、例えば親から仕送りを受けている未婚の学生についても補償の対象となります。

なお最近では、補償の対象となる人が「責任無能力者」である場合、その親権者や法定監督義務者などを補償の対象とする保険会社も出てきました。認知症を患っている人が踏切内に入り込んで事故を起こしてしまった場合、その監督義務者に責任が問われた事件を汲んでのことです。電車自体に損傷はなくても、遅延損害金に対応する補償を出している保険会社もあります。 逆に「責任無能力者」は補償の対象としない、と明記する保険会社もあります。

3⃣ 補償の対象となる事故例

他人の「身体」や「財物」に損害を与えた場合が対象となります。他人への名誉棄損やプライバシーの侵害といった「形のないもの」は補償の対象外となります。

   ・買い物中に陳列商品を落とし破損させた。
   ・飼い犬が他人を噛んでケガをさせた。
   ・子供が駐車場に停めてあった他人の車をキズつけた。
   ・自転車で走行中に歩行者とぶつかり後遺障害を負わせた。
   ・風呂場からの水漏れにより、階下の戸室の家財に損害を与えてしまった。
   ・ガス爆発によって、隣の建物を損壊させた。
   ・ベランダの鉢植えが落下して歩行者の頭に当たり死亡させた。

最近では自治体が、「自転車保険」への加入を義務付けるという話しもありますが、火災保険や自動車保険に特約として個人賠償責任保険が付保されていれば、わざわざ「自転車保険」に加入する必要はありません。

4⃣ 補償の対象にならない主なもの

   ・故意によるもの
   ・地震・噴火またはこれらによる津波に起因する損害賠償責任
   ・同居の親族に対する損害賠償
   ・他人から借りたモノを壊した場合の賠償事故
   ・仕事中に起こった事故の賠償責任
   ・被保険者の心神喪失に起因する損害賠償責任
   ・航空機・船舶・車両の所有、使用、管理により発生した事故 など

仕事中に起こった事故(飲食店で料理をこぼしお客様がヤケドをしたなど)や、車両に関する事故は、それを補償する保険(業務向けの賠償保険や自動車保険)があるので、そちらでの対応になります。

同居の親族に対する損害賠償も対象になりません。例えば、子供が親の腕時計を誤って壊しても、その損害賠償は補償の対象になりません。

5⃣ 保険金支払いの対象となる主な費用

   ・被害者に対する損害賠償金(治療費、修理費、慰謝料など)
   ・弁護士費用、訴訟に要する費用、調停・和解・仲裁の場合に要する費用

ケガをさせてしまった相手への治療費や、壊したモノの修理費、慰謝料などが補償の対象になります。また、裁判や調停などに係る費用も対象になります。

6⃣ 個人賠償責任保険で注意すること

個人賠償責任保険は色々な損害保険(火災保険、自動車保険、ペット保険等)に特約で付保することができます。

しかし、個人賠償責任保険はどの損害保険に付保することができると半面、知らずに複数の契約を結んでしまうと言うケースも見られます。複数契約しても支払われる金額は決まっていますので、保険料が無駄になってしまいます。(5000万円の損害で、1億円の保険に2つ加入していても請求出来るのは5000万円)

無制限の補償に加入していれば、それ以外の補償は無駄になるので、無制限の保険だけ残して、あとは解約すれば保険料の節約になります。

7⃣ 管理組合が組合員のために一括付保する個人賠償責任保険

ほとんどの管理組合は共用部分に火災保険を掛けていますが、その火災保険にも特約として個人賠償責任保険を付保することができます。

管理組合にとっては、上下階の漏水事故の際に、組合員に生じた賠償責任を補償するために使われることが多い保険です。本来は組合員個人で加入すべき保険だと思いますが、加害者が保険未加入だった場合の被害者救済やトラブルを回避するなどの目的で、管理組合が全世帯分を一括付保するのが常態化しています。

8⃣ 個人賠償責任保険の保険料が高騰??

年々、マンションの火災保険料は高騰しています。特に築年数が30年以上のマンションになると、主契約の火災保険料が新築マンションの3~4倍、特約の個人賠償責任保険の保険料が新築マンションの10倍以上となるケースがあるなど、驚くほどの跳ね上がりぶりです。(築年数の古いマンションにおいて、それだけ個人賠償責任保険が使われるているということです。)

一方、個人で賠償責任保険に加入する場合の保険料は、管理組合で一括付保したときの保険料の1/4程度であるため、個人で賠償責任保険に加入することを促す動きが始まっています。

※個人賠償責任保険料は、保険会社によって異なりますが、築10年を超えるあたりで個人加入のほうが割安になる傾向があるようです。保険料を検討するときには、一括付保の見積りの他に、個人加入でいくらになるのかの見積りも比較検討する必要があるでしょう。

9⃣ 個人賠償責任保険は管理組合で一括付保すべき?個人で加入すべき?

もともと個人賠償責任保険は、個人の日常生活のリスクを補償するものです。共用部分の管理を目的とする管理組合が、個人の生活に関与すべきではないし、そもそも関与することはできないという考え方もあるでしょう。また、マンション外で何らかのトラブルを起こしてしまって賠償責任が発生した場合、事故の報告や保険金の請求は管理組合が窓口になります。そうすると必然的に個人のプライバシーを管理組合の役員や管理会社に知られてしまい、個人情報の流出など別のリスクが発生してしまう可能性もあります。

一方で、これまで管理組合が一括付保してきた理由である被害者の救済、トラブルの回避、管理組合の円滑な運営にも一理あります。上下階の漏水の場合は特に、その原因が分からない場合が多く、原因調査をしている間は被害者が救済されなかったり、加害者に資力がないために被害者の救済を行わないなどのトラブルを回避することも、集合住宅の性質上やむを得ないことであるとも言えます。

一括付保を完全にやめるのか、またはこれまでどおり管理組合の負担で一括付保するのか、あるいは個人で加入してもらうが、保険料は管理組合が負担するなどの様々な方法が検討されると思います。いずれにしても双方のメリット・デメリットをすべて明らかにしたうえで、管理組合内部で合意形成していかなければなりません。…end